情報・通信、自動車関連、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアを中心に幅広い事業をグローバルに展開する京セラ株式会社。生産部門に映像解析AIサービス「VAAKEYE 工場DX」を採用し、事故や管理不備の未然予防に活用しています。
これまで防犯カメラは有事に見返すだけでしたが、AIの検知アラートをリアルタイムに確認することで、重大事故の兆候を早期に発見して対策を行う、新しい管理体制に刷新されました。
平野氏:
弊社の工場では機械設備や化学物質などを扱うため、使い方によっては事故や管理不備につながる行動となりかねず、ルールに則った使い方をする必要があります。こういった管理面の継続的な改善が事業者には求められており、私たち間接部門の課題としてあります。
そんななか、外部セミナーでカメラ映像に対し、AIによる映像解析を活用することで人的負担が大きく軽減したという話を聞きました。そこから連想して、管理面の改善についてもAIを活用して問題を検知し、原因特定に役立てることができるのではないかと考えたのがきっかけです。そこからリサーチを進めていったところ、取引先からVAAKさんを紹介いただきました。
平野氏:
先に述べた管理面の継続的な改善が課題としてあり、事故や管理不備が起こるのは、ピラミッドのように考えられます。事故に至らないヒヤリ・ハットの数、さらにその下の禁止行動や危険行動の数をいかに減らしていくかについて、対策の強化が必要と考えていました。
様々なアプローチがあるなか、カメラを設置していたものの、有事に見返すものでしかなく、上手く活用できていないという課題もありました。そこで防犯カメラで行動分析を行うという方法をピックアップしていきました。AIによって兆候を可視化し、効果的に対策が打てるだろうという考えです。
大田氏:
はい。導入スピードとコストパフォーマンスを重視し、比較検討を行いました。
他社では要件定義から開発・導入まで1〜2年かかると言われていたところが、VAAKEYEでは100以上の行動が学習済みで提供されており、弊社が想定していた行動も学習済みだったため数か月でPoCが完了しました。
そしてコスト面ですが、他社のスクラッチによるAI解析エンジン作成と比べると、VAAK社では既存モデルがあるため、非常に安価でした。
以上の2つのことからVAAKEYEが最有力候補になりました。ただし、弊社環境下で正常に動作することを確認し、実際にカメラ前で実演を行う形で検知テストを行いました。その結果、弊社の基準を満たすと共に、誤検知も非常に少ないことが確認できたため、導入を決定いたしました。
松ヶ迫氏:
初めに総務人事本部と経営管理本部の本社メンバーで、企画・検討及び運用ルールを策定しました。導入拠点の間接部門や製造部門に趣旨を説明する部分は、環境安全部・経営管理部が中心となり進め、私たち経営情報システム部ではVAAKさんと仕様に関する取り決めや社内インフラに関わる部分を担当しました。結果として現場の方に理解・協力してもらい、苦労がありましたが、チーム一丸となって進めることができました。
松ヶ迫氏:
特に知識のすり合わせと、社内の意思統一です。
1つ目の知識のすり合わせは、AIという新しいものの難しさ、製造工程の特殊性に関してです。VAAKさんの仕組みというのはおおよそホームページで理解できましたが、弊社側のAIへの知識不足があったため、VAAKさんと言葉の定義が当初は合わなかった点です。また、コロナ禍のためVAAKさんが来場いただくことが難しく実際の製造現場の環境を理解していいただき共通認識をもっていただく点が苦労しました。
この課題を解決するために、WEBによる週次ミーティングを通じて、導入目標や言葉の定義など認識を合わせることができました。
2つ目の社内の意思統一は、平たく言えばAIに対する懐疑的な声です。システムならば100%じゃないといけないという見方や、監視するようなことはよくないという意見でした。システムの精度という点に関しては、AI検知の閾値などチューニングをおこない、繰り返しシミュレーションをおこなうことで、今回の目的である対策に有効であると理解を得ることができました。また、監視のようなことがよくないとする意見に対しては、人命にも関わる対策であり、休日・夜間に危険があった時には知らせてくれる有効な仕組みと捉えてもらいました。
上田氏:
工場の製造工程に導入しており、複数拠点計500台のカメラを解析対象としています。
検知アラートには4つの緊急度が割り振られていますが、「緊急」など上位のアラートの場合、すぐに確認するという手順になっております。平日日中であれば事業部や間接部門、祝日や夜間であれば警備室で確認しています 。
検知アラートはメールで届きますので、スマホで検知内容やサムネイルが確認できます。それだけでもある程度判断できますが、必要なら管理画面にログインして、検知映像を確認します。そして確認後の対応としては、人命に関わる状況なら119番、その他エスカレーションが必要なものなら事業部へ報告し、一連の作業が完了したら、管理画面に対応結果を記録します。
平野氏:
管理体制の改善、特にカメラ映像の運用が大きく変わりました。
これまでは24時間365日誰かが見て確認を行うことを求めていましたが、現実的には難しい状況でした。録画映像については、社内で定めた期間のデータを保持するルールとなっており、一定期間を過ぎれば、録画映像は消えてしまうわけです。確認しようとしても、対象のカメラは事業部によっては100台近くあり、人が倍速で映像を見返すと見逃しも多いことなど非現実的なものでした。
それがVAAKEYEを導入したことで、検知アラートに対応していれば、録画映像を確認していると見做すフローに変わりました。非現実的だった運用ルールが、現実的なものになったというのは非常に大きいと思います。
他の点では、VAAKEYEを利用していると、いろいろな検知アラートを目にするわけですが、例えば「転倒」というアラートの場合、ある作業者が滑って体勢を崩したことを検知してくれました。検知映像を見て、タイルを滑りにくいものに変更しました。
このように潜在的なヒヤリ・ハットが可視化されることで、重大事故の可能性を未然になくすことができていると考えています。
大田氏:
今後は、品質面の管理を行うため、VAAKEYEに特定の製造工程を覚えさせ、該当動作以外を行なった際に検知するなどの特定行動に特化した検知することや、入退室時に生体認証を使わず、AIでの顔認証を行うこと。安全管理の面でバーチャルフェンスを用い、侵入時に検知するなど、VAAKEYE機能を用いて実現したいと考えております。